「第11回映画の復元と保存に関するワークショップ」レポート

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映像は残るもの――そして残せるもので、残していくべきもの。
今年で11年目を迎える「第11回映画の復元と保存に関するワークショップ」が、8月26日から8月28日まで3日間を掛けて開催されました。
3日目のIMAGICAがモデレーターを務めた「様々な領域における映像アーカイブ活動~放送、アニメーション、実験映画~」を中心にレポートします。

大阪開催から東京へ~映像の復元と保存のニーズの高さ

その名のとおり、同ワークショップは映像の復元と保存のためのワークショップ。映画をはじめとする動的映像の復元と保存に関する意義や最新情報、今後の課題について理解を深め、参加者同士の交流とネットワーク強化を目的とし、フィルムを収集・所蔵する博物館や美術館の学芸員、司書、アーキビスト、研究者、新旧様々な映像に携わる各企業や団体、映画の復元や保存に関心を持つ学生やマスコミ、また映画だけでなく映像を愛するすべての人々を対象に毎夏行われてきました。
2006 年の第1回目は、学生や各種博物館の学芸員の方々を対象に、現像所(大阪のIMAGICAウェスト)内での実技体験や、各アーカイブからのゲストによる講義が行われました。そして、昨年2015年の第10回目までは、京都、大阪、神戸など関西で行われてきていましたが、映像のアーカイブに対する興味が高まる中、より多くの人々に参加してもらい、領域横断的な情報共有を目指したいということで、2016年の第11回目は初めて東京での開催となりました。東京での初開催にともない、長く実施に関わってきた協会の皆さんと共に主催として参加することとなりました。
今年も見学・実習の実技、そしてそれぞれの経験や新たな試みについて語ってもらう講義でワークショップは構成。1日目の8月26日は東京国立近代美術館フィルムセンター相模原分館や株式会社東京光音、株式会社東京現像所や共進倉庫株式会社・高津映画装飾株式会社・角川大映スタジオ、IMAGICA 東京映像センターなどで施設見学や実作業体験を行い、2・3日目の27日と28日はIMAGICA 東京映像センター第一試写室を会場に、講義とトークセッションが催されました。

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3日目 レポート~様々な領域における映像アーカイブ活動

関口 智子(IMAGICA)

関口 智子(IMAGICA)

3日目の28日、IMAGICA・関口智子がモデレーターを務めたセッションが、「様々な領域における映像アーカイブ活動~放送、アニメーション、実験映画~」。このセッションでは、すでに色々な形で実績を蓄積している映画以外の領域での様々な映像アーカイブ事業への取り組みについて放送、アニメ、実験映画におけるアーカイブ担当者が登壇し、それぞれの現状と取り組みの説明が行われました。
当日は台風10号の接近で天候がすぐれない中にも関わらず、数々の名作映画が試写上映されてきたIMAGICA第一試写室(客席数143)を埋め尽くす受講者が参加。関心の高さがうかがわれました。いわゆる映画以外での復元と保管に関して、モデレーターである関口から「制度や資金面・人材面、様々な課題があり、皆さんご苦労されている中で活動されているというのが、ワークショップの中で共有されてきたことではないかと考えております。そういった中で視線を広げまして、ほかの領域の映像アーカイブ活動ではどういった課題に直面して、それに対してどうアプローチしているのか。私自身、勉強したいという思いで今回のセッションを設定させていただきました。
今回、東京で開催させていただいたひとつの目的でもありますが、より多様な方々にご参加いただくことによって、皆様にとって新しい発見が得られる場になれば幸いと思っております」と実施主旨が語られ、セッションがスタートしました。


霜山 文雄 氏(NHK)

霜山 文雄 氏(NHK)

柴田 真希 氏(NHK)

柴田 真希 氏(NHK)

まず最初に登壇したのは、日本放送協会(NHK)知財センターアーカイブス部の柴田真希氏。「NHKアーカイブスの歴史とアーカイブスの進化」についてのプレゼンテーションでは、文化資産としての映像・番組を保存して活用すべく、1985年から始まったデータベースの機能強化を図り、映像資産すべてのファイル化を進めているNHKの取り組みが語られました。このあとを受け、同じく日本放送協会(NHK)の知財センターアーカイブス部チーフディレクターの霜山文雄氏が、「NHKアーカイブスでのフィルムと映像修復の関係」として、映像修復の今についてティーチインを行いました。1953年のテレビ放送開始以降、生放送とフィルム、また1958年にVTRへ移行して放送が行われてきた中で、1999年からは過去の映像の修復も本格化。どのようにして修復が行われていて、またどのように生まれ変わるのかも実際の映像を用いて説明されました。


吉田 力雄 氏(トムス・エンタテインメント)

吉田 力雄 氏(トムス・エンタテインメント)

続いて、アニメーション製作会社である株式会社トムス・エンタテインメント特別顧問の吉田力雄氏が、「『名探偵コナン』4K化作業及びデータバックアップに関する課題」と題して講義。『ルパン三世』や『それいけ!アンパンマン』と並ぶ同社の人気シリーズである『名探偵コナン』は、1996年にTVアニメがスタート。また翌年の1997年から毎年春に劇場版アニメが公開されていて、第20作となる今春公開の『名探偵コナン 純黒の悪夢』の興行収入は過去最高の63億円の大台に乗る大ヒット作となっています。同劇場シリーズは、2002年公開の6作目『~ベイカー街の亡霊』までをフィルム、翌年2003年功公開の7作目『~迷宮の十字路』からはデジタルで製作されていますが、「名作を次の世代へ繋ぐ」という意味で同社はデジタル製作分に関しても原版をフィルム化して保管。この時代にあってのフィルムの良さ、強みにも言及する内容に。また一方でフィルム製作だった1997年公開の第1作『~時計仕掛けの摩天楼』を、今年春に4KデジタルリマスターでTV放送。最新の取り組みと細心の作業についても語られ、アニメーションの今を知る講義となりました。
最後に一般社団法人日本動画協会の副理事長でもある同氏は、今春「アニメ100周年プロジェクト」を組成し、来年、実施されることにも触れ、今後も歴史ある日本のアニメーションのアーカイブ事業にも積極的に取り組んでいく決意を語られました。


平沢 剛 氏(明治学院大学)

平沢 剛 氏(明治学院大学)

そして最後のテーマとなったのが、実験映画。明治学院大学 言語文化研究所研究員で、1960年代における日本の実験映画、アンダーグラウンド・インデペンデント映画といった分野を専門とする研究者である平沢剛氏が登壇。海外を中心にフリーのプログラマー・キュレーターとして、日本映画の上映を企画している氏が、研究者・プログラマーとして、どのようにこの時代の作品の修復や保存に関わってきたか、今後どのように関わっていくべきかについて時代に即して紹介しました。各機関と共同で調査を行いながら、上映・展示企画や作品収蔵による予算を得て修復や保存を行っていくという、実験映画をはじめとしたアンダーグラウンド・インデペンデント映画の在り方について語る中で、なかなか光の当たらない、また日の目を見ることも少ない貴重な作品映画をどう残していけるのか、いくべきなのかという試みについての講演は、貴重な内容となりました。


講義が終わっての質疑応答でも、それぞれのアーカイブの登壇者に途切れることなく質問が続き、「様々な領域における映像アーカイブ活動~放送、アニメーション、実験映画~」のセッションは最後まで熱のこもったものとなりました。同日午後には「日本映像職能連合(通称「映職連」)と考える映画保存」「『七人の侍』(東宝 1954)はいかにして蘇ったか」のセッションも行われ、閉会の辞、実習報告会、上映会をもって3日間のすべてのプログラムは終了しました。

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IMAGICAは今後も映画はもちろん、それ以外の様々な映像領域にも積極的に携わり、実際の復元、保存活動を業務として請負いつつ、こうしたアーカイブ事業そのものの重要性についての普及活動について、今後も積極的に関わっていきたいと考えます。また、映像の復元、保存についての取り組みは、国内のみならず海外でもその需要は高く、こうした活動を通して、広くそのニーズに応えていきたいと思っています。

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