「第12回映画の復元と保存に関するワークショップ」レポート

東京での2回目の開催へ~領域横断的な情報共有を目指して

「映画の復元と保存に関するワークショップ」は、映画をはじめとする映像の復元と保存に関する意義や最新情報、今後の課題について理解を深め、参加者同士の交流とネットワーク強化を目的として行われているもの。
2006 年の第1回目から一昨年2015年の第10回目までは京都、大阪、神戸を会場としていましたが、映像のアーカイブに対する興味が高まる中、より多くの人々に参加してもらい、領域横断的な情報共有を目指したいということから、昨年2016年の第11回目に初めて東京での開催へ。
今年2017年も東京国立近代美術館フィルムセンター、鎌倉市川喜多映画記念館、株式会社東京光音、株式会社東京現像所、東宝スタジオ、そして株式会社IMAGICA東京映像センターにてそれぞれ施設見学や実作業体験、また講演や講義、セッションが催され、モデレーターや登壇者含め、多くの方々にご参加いただき、大盛況のうちに終了いたしました。


体験型の実習を2つ同時に実施~IMAGICA東京映像センター

このうち、見学・実習をメインとした初日25日に各所で行われたのが、東京国立近代美術館フィルムセンターでの「ノンフィルム資料の保存と修復」、鎌倉市川喜多映画記念館での「施設見学+『鎌倉映画地図』探訪」、東京光音での「ビネガーシンドロームの対策実習」、
東京現像所 での「フィルムワーク体験」、東宝スタジオ での「『ゴジラ』『七人の侍』を生んだ東宝スタジオ見学」。そして、IMAGICA東京映像センター では、「映画のデジタル修復実習」と 「あなたの映像をフィルムにしよう!-手現像と染色体験つき―」の2つのワークショップを開催。参加者からは、体験型の実習を望まれる声も多く、より具体的に作業や機材に触れ、実践的に映像の仕事の中身と楽しさ・素晴らしさを知っていただきたいと考え、IMAGICAとしては初となる実習型ワークショップでの開催となりました。

「映画のデジタル修復実習」は、デジタル修復の作業見学と、参加者自身でも体験してみるというもので、まさに映画の復元と保存を体感する構成。どんな名画であってもフィルムは経年劣化により、褪色やキズ、ゆれなどが生じます。それらの症状をデジタル化した上でどのように修復していくのか、目と耳だけでなく、手と肌で知ることができる実習構成としました。
また、「あなたの映像をフィルムにしよう!―手現像と染色体験つき―」は、最新のスマートフォンやデジタルカメラで撮影した映像を、フィルムレコーディングという手法でフィルムに置き換え、その中でフィルム化の仕組みを学ぶというものです。さらに簡易的な手現像や、戦前の技法である白黒フィルムをカラーにする染色法の体験を実施し、
フィルムそのものについて理解を深める内容構成で、特別講師として、映画監督の七里圭氏にもご参加いただきました。

高橋守朗

高橋守朗

野口進一

野口進一

当日、両実習に参加される方々は、まず始めにIMAGICA東京映像センター・第二試写室に集まり、「フィルム~デジタル修復におけるワークフロー説明」と、デジタル修復実習の題材となる作品の上映に参加されました。当日の参加者はデジタル修復実習が15名、フィルムレコーディング&手現像染色実習が13名で、総勢28名。参加された方たちは、フィルムを収集・所蔵する博物館や美術館の学芸員、司書、アーキビスト、研究者、新旧様々な映像に携わる各企業や団体の方々、映画の復元や保存に関心を持つ学生やマスコミの方々などで、東北から足を運ばれた方もいれば、海外からのご参加もありました。受付期間内にすでに枠を超えるまでの応募をいただき、会場も大盛況に。まず映像事業本部本部長・野口進一より、「フィルムの会社」として創業したIMAGICAの成り立ちと本ワークショップの意義について挨拶させていただき、続けて、映像事業本部 プロダクション部 アーカイブグループのメンバーで、『ALWAYS~三丁目の夕日~』(05)、『天然コケッコー』(07)、『海猿』(04)などのフィルムの色調整に携わり、現在はスキャニングを担当している高橋守朗からフィルムの歴史と仕組み、デジタル修復のワークフローとIMAGICA独自のシステムや取り組みについて説明させていただきました。
この日、デジタル修復実習の題材として上映されたのは、大島渚監督の名作『戦場のメリークリスマス』(83)。大島渚プロダクションのご厚意により、オリジナルネガフィルムからの貴重なプリントをお預かりして上映致しました。出席者の方に元のフィルムが持っている色調や映写機を通すことでプリントに付いてしまった黒いキズやゴミ、ネガにあるであろう白いゴミなどの状態を確認して頂き、これからワークショップで体験の工程を経て、デジタル修復によってどうなるかを実感して頂くことが目的です。

「映画のデジタル修復実習」編

このあとデジタル修復実習チームは3班に分かれて、作業場を見学。流れとしてはまずフィルム整理場でフィルム自体をチェックする作業に触れましたが、「このフィルムは原版ですか?」と質問が出たり、また積極的にメモを取って細かな点まで着目するなど、参加者の映像修復への興味と熱意がうかがえました。さらにスキャンルームで、フィルムをデジタルにスキャンする作業と工程も見学。IMAGICA東京映像センターにあるScanityを対象に、スキャナーにテストフィルムを手でかけ、フィルムが画像データとなって取り込まれていく様子を間近にご覧いただきました。また、デジタル修復では、スタビライズ(揺れ止め)、デフリッカー(色ムラ軽減)、パラ・キズ消しなど、劣化症状に対応する修復方法についての説明の後、修復用アプリケーションDIAMANTを使用して参加者の方々もパラ・キズ消しを体験。『戦場のメリークリスマス』を題材に、デヴィッド・ボウイ演じるジャック・セリアズ英軍少佐が学生時代の自分を回想するシーンで、まずは手作業によるパラ・キズ消しに挑戦した後、自動でパラを認識し除去することのできる処理にも触れるなど、一連の作業を学びました。

そして会場は、IMAGICA初のデジタルカラーグレーディングルームである「北斎(Hokusai)」へ。ここでは プロダクション部 データイメージンググループ・阿部悦明の下、スキャンされたデータのカラーグレーディング作業を体験。グレーディングツール・Baselight を参加者自身が使い明暗と色味を調整して、『戦場のメリークリスマス』のネガの持つ豊かなトーンから、人の顔や実景の色味を自然なトーンに持っていくという実習を行いました。参加者の方々はそれぞれ好きなカットを選び、ハイライト、暗部、中間部の明暗・色味を視覚として認識できる波形モニターを見ながら、リングとトラックボールを触って操作。それぞれに個性と好みも出しながら、「難しいけれど、楽しいですね」と貴重な体験に興奮の声を挙げていました。

「あなたの映像をフィルムにしよう!―手現像と染色体験つき―」編

一方、プリントの手現像と染色体験を行ったフィルムレコーディング&手現像染色実習チームからも、あちこちで「楽しい」という声が。冒頭には、データをネガフィルムに焼き付けるフィルムレコーディングの工程の見学により、フィルムで保存することはもちろんのこと、新たな表現方法としてのフィルムについても理解を深める場が提供されました。同チームは雨合羽とゴム手袋という姿で、自ら薬品を使ってレコーディングネガからプリントした白黒ポジを手現像し、それを染色していく作業を体験。漬け置いておく時間や乾かす時間、調色と染色の組み合わせによっても色味や風合いが変わってくるため、科学の実験やアート制作のような趣もある同作業。フィルムだからこその良さ、楽しさを、デジタル全盛時代の新しさも加味され、作業を通じてあらためて体感されていました。

実習の最後に

そして最後、再び両チームが第二試写室に集まって行われたのが、フィルムレコーディング&手現像染色実習チームが事前に撮影していた映像をフィルム化したものと、デジタル修復されたバージョンの『戦場のメリークリスマス』の上映でした。
フィルムレコーディング&手現像染色実習チームの映像は、各参加者の方から事前にお送りいただいていた1分程度のムービングファイルをデータ変換し、4Kレコーディングしてフィルム化したもの。皆さん各々に、花火やお子さんの映像を撮られていたほか、中にはフィルム化されることを念頭においてショートフィルムの無声映画のようなタッチの映像を撮られていた方もいれば、あえて最新のデジタル映像を仕上げられていた方もおり、試写室は単なる映像上映ではなく、まるで映画祭のような趣に。最後に上映されたフィルムのプリントとレコーディングネガは、撮影者の方にそれぞれプレゼントいたしました。

また『戦場のメリークリスマス』も午前中に観た経年フィルムの映像とはまるで違う、よりクリアで往時の色味に再現された映像が上映され、作品自体が鮮明になると共に、撮影時に監督・カメラマンがフィルムで切り取った映像をより鮮烈に映し出していました。
両チームとも、100年以上保存が可能であることを実証されているフィルムの持つ素晴らしさ、そして古き良きフィルムにも活かせるデジタルの素晴らしさを再確認していただき、満足されて試写室を後にされました。

IMAGICAは今後も「映画の復元と保存に関するワークショップ」をはじめさまざまな活動を通じ、映像文化の発展と繁栄に寄与してまいります。

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