文化庁 平成28年度ASEAN文化交流・協力事業(映画分野)
デジタルシネマ制作ワークショップ in マレーシア 実施レポート

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文化庁平成28年度ASEAN文化交流・協力事業(映画分野)の、「デジタルシネマ制作ワークショップ in マレーシア」が平成28年10月31日から11月5日までマレーシアのImagica South East Asia(以下、Imagica SEA)と隣接するPinewood Iskandar Malaysia Studios (以下、PIMS)で行われ、Imagica SEAが現地コーディネートおよびサポート業務を行いました。

この事業は文化庁がASEAN文化交流を目的とし、アジアにおける映像分野の活性化を目指し実施するもので、公益財団法人ユニジャパンおよび東京藝術大学大学院映像研究科によって企画・運営されており、昨年に引き続き(http://www.imagica.com/topics/aseanworkshop_isea_my/)、マレーシアで実施され、映画分野において、日本を代表する高い技術と経験を持った制作者達が、現地に派遣され、東京藝術大学が中心となり開発した教育カリキュラムに基づく実践的なワークショップや専門性の高いレクチャー等を行いました。

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今年は第一線で活躍する日本の映画制作者である、東京藝術大学の教員を中心とした監督、撮影、美術、編集の講師とImagica SEAが手配したサウンド分野の講師(各講師詳細、以下URL参照)でチームが結成され、マレーシアのマルチメディア大学(MMU)のFaculty of Cinematic Artsの学生13名、シンガポールのラサール芸術大学映画学科の学生6名に日本の東京藝術大学大学院映像研究科の学生5名が加わった計24名を対象としたワークショップで、期間中に短編映画を制作することにより、より総合的な映画制作体験が出来るものとなりました。また、Imagica SEAに隣接するPIMSも活用され、映画制作には最適な環境での開催となりました。

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講師の方たちにお話をお伺いしました。


東京藝術大学大学院映像研究科 監督 諏訪 敦彦 教授

諏訪 敦彦 教授

諏訪 敦彦 教授

東京造形大学在学中にインディペンデント映画の制作にかかわる。卒業後、テレビドキュメンタリーの演出を経て、96年に『2/デュオ』を発表し、ロッテルダム国際映画祭最優秀アジア映画賞受賞。『M/OTHER』でカンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞受賞。その他の主な作品に『H/Story』『パリ・ジュテーム』(オムニバス)『不完全なふたり』(ロカルノ国際映画祭審査員特別賞)『ユキとニナ』など。完成された脚本を用いない独特の手法で知られる。2008年から2013年まで東京造形大学学長を務めた。


‐初めてこのマレーシアでのワークショップに参加されたと思うのですが、学生たちの印象はいかがでしたか?

諏訪:ヨーロッパでは少し教えたこともあったのですが、アジアでのこうしたワークショップへの参加は初めてで、マレーシアに来るのも初めてだったのですが、こんなに整った環境があるのに驚きました。アジアの学生たちに教えるのも初めてだったのですが、ヨーロッパ、日本と比べてそんなに大きな違いはなかったですね。日本の学生たちは今、一般的には、なんとなく自分たちが居心地の良い環境にいたがる傾向が強く、違う国で学ぼうといった意識が低く、内向きになりがちなんですね。それに比べて、多民族で構成されているということや、色々な言語の中で暮らしているということもあって、こちらの学生は自分のやりたいことをちゃんと主張するという感じがしました。
こういう環境で一緒に学ぶというのは、日本の学生たちにとっても絶対重要なことだなと感じましたね。

‐今もそうですが、映像業界で今後も日本だけでなく東南アジアとのやりとりや共有は増えていく傾向にあると思うのですが、この辺りどう感じられましたか?

諏訪:重要なことですよね。こうしたワークショップもそうだと思うのですが、日本発信とか東南アジア発信とかいうことではなく、お互いに交流し合うことがどちらにとっても刺激になり、結果、映像業界にとって良いことだと思います。
僕個人は今、フランスでの映画制作がメインで制作、ラボなど、「自分だけが外国人」という環境の中でやっているんですね。自分自身はなるべくそうした環境の中で違和感を感じないように仕事をしていますが、マレーシア、しいては東南アジアにおいてIMAGICAさんが進出していて、現地に根付いた業務を進めていてくれることは、日本人のクリエイターにとってはすごくメリットのあることで、心強いですよね。


東京藝術大学大学院映像研究科 撮影監督 柳島 克己 教授

柳島 克己 教授

柳島 克己 教授

写真学校を卒業後、72年に三船プロダクションに契約社員として入る。82年からフリーの助手となり、87年に映画としては初めて撮影を担当する。主な担当作品は北野武『3-4x 10月』『あの夏、いちばん静かな海』『ソナチネ』『Kids Returnキッズ・リターン』『座頭市』『アウトレイジ』ほか14作品担当。柄本明『空がこんなに青いわけがない』、深作欣二『バトル・ロワイアル』、行定勲『GO』、滝田洋二郎『阿修羅城の瞳』、佐々部清『出口のない海』、西川美和『ディア・ドクター』『夢売るふたり』などがある。


ラサール芸術大学映画学科 撮影監督 浦田 秀穂 教授

浦田 秀穂 教授

浦田 秀穂 教授

ニューヨーク大学大学院在学中にアーネスト・デッカーソンやスティーブン・H・ブラムなどのカメラ・アシスタントを務め、撮影現場で経験を積む。現在、国内外で撮影監督として活躍中。2011年よりラサール芸術大学映画学科に就任。主な作品に『KAMATAKI』(モントリオール国際映画祭5部門受賞、ベルリン国際映画祭特別賞)、『クローンは故郷をめざす』(サンダンス映画祭正式招待作品、モントリオールファンタジア映画祭最優秀撮影賞)、『Disappearing Landscape』(ロッテルダム国際映画際招待作品)、『7 Letters』(釜山国際映画祭招待作品)などがある。『7 Letters』は第88回米アカデミー賞外国語映画賞部門のシンガポール代表作品に選出された。


‐今回のワークショップの印象をお願いします

yanagishima-urata_640-350柳島:今回は、モノクロで撮影、35mm1本、レンズは1本という制限の中で作業をしてもらいました。そしてモニターは見ない。昔のフィルム時代のような撮影スタイルを、ワークショップで実現するというテーマだったんですよね。

‐今回のワークショップには3か国(日本、マレーシア、シンガポール)の学生たちが参加したのですが、この辺りいかがでしたか?

柳島:マレーシアの学生たちは技術的にはもう少しスキルアップというか、レベルアップが必要かなという印象は受けましたね。日本人は言葉の問題もあるかと思いますが、やはり考え方が少し閉鎖的ですかね。考え方においてはマレーシアや、シンガポールの学生の方が前向きで、幅広い思考で課題に取り組みますね。

‐浦田さんは、いつもシンガポールで教えてらっしゃるわけですが、今回、3か国の学生が一緒になった感じはいかがでしたか?

浦田:それぞれの環境で学ぶ学生たちには、色々とそこでの不満はあるかと思うのですが、こうした違う国の学生たちが1つのテーマに一緒になって取り組むという、ワークショップが東南アジアではあまりなかったと思うので、こういう試みがどんどん増え、内容も充実してくるといいなと思いますよね。
今、タイとインドネシアでは映画制作が盛んですが、マレーシアとシンガポールは、なかなか映画産業が思うように発展していないんですね。ただ、60年代、70年代はマレーシアにも良い映画がたくさんあるので、映画制作のサポート体制や、国を超えた制作環境が整ったら良い作品が増えるのではないかなと思いますね。

‐日本企業としてはこうした動きをサポートしていきたいなと思うのですが、この点どうですか?

浦田:シンガポールで教えている私としてはすごく心強いですね。ビジネスだけでなく、教育面でも若手育成含め、一緒に活動していくことで両国の映像制作において、もっと密につながれるようになるといいなと思うし、そこにすごく可能性を感じています。
またシンガポールの映画制作の現場においても、このマレーシアのスタジオはとても環境が良いし、魅力的なロケーションでもあるので、もっと活用できるといいなと思っています。

柳島:学生たちにとっては、アジアという比較的、僕らに近い感覚の国民性を持った人たちと一緒に作業をすることはすごくメリットがありますよね。ただ、やはり宗教や人種など色々な問題がある中で、日本企業が現地にいて、すでに環境を整えてくれているのは、すごく助かりますね。
それにマレーシアのこのスタジオ環境はもっと多くの人に活用してほしいですね。ロケ費とかネックになるかもしれませんが、絶対、良い映画の1シーンが撮影できると確信しています。


東京藝術大学大学院映像研究科 編集 宮島 竜治 非常勤講師

宮島 竜治 非常勤講師

宮島 竜治 非常勤講師

1967年生まれ。神奈川県出身。『スウィングガールズ』と『ALWAYS 三丁目の夕日』、『永遠の0』で日本アカデミー賞最優秀編集賞を受賞。主な作品に、『ウォーターボーイズ』、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ、『ゆれる』、『毎日かあさん』、『STAND BY ME ドラえもん』、『トイレのピエタ』、『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』、『永い言い訳』、『サバイバルファミリー』など。


‐初めてこのマレーシアでのワークショップに参加されたと思うのですが、学生たちの印象はいかがでしたか?

宮島:来る前は、国も違うし、もちろん言葉も違うので、その辺でのニュアンスの伝わりづらさとかあるのかなと不安に思っていたのですが、実際は、普段、日本の生徒から聞いているのと同じような悩みだったので、映画の編集においては世界共通言語なんだなあと感じました。

‐今もそうですが、映像業界で今後も日本だけでなく東南アジアとのやりとりや共有は増えていく傾向にあると思うのですが、この辺りどう感じられましたか?

宮島:日本との距離が近い分、欧米諸国とのつながりに比べると、お互いの国の行き来もしやすいし、色々な意味で可能性は広がると思いますね。
こうして、僕らがよく知っているIMAGICAさんがすでに現地に出られて、そこで、日本流とは違う環境での作業に関して理解し、設備も整えていてくれるのは、すごく心強いですよね。日本の若いスタッフにも研修や見学などでもいいので、ぜひ実際に行かせたいな思いましたね。


東京藝術大学大学院映像研究科 美術 磯見 俊裕 教授

磯見 俊裕 教授

磯見 俊裕 教授

大学卒業後、様々な職業を経て、舞台美術・監督を手掛けるようになる。その後、映画美術担当として多くの映画に参加。主な作品には是枝裕和『ワンダフルライフ』『誰も知らない』『花よりもなほ』『歩いても、歩いても』、石井聰亙『ユメノ銀河』『五条霍戦記』、崔洋一『刑務所の中』『血と骨』、黒木和雄『美しい夏キリシマ』、深作欣二、深作健太『バトル・ロワイアルII』、河瀬直美『殯の森』、三木聡『転々』、橋口亮輔『ぐるりのこと。』などがある。


‐昨年に続いてのワークショップだったと思うのですが、昨年と印象は違いましたか?

磯見:昨年はマレーシアにはあまり長く滞在していなかったのだけど、食事がおいしいという印象があって、そこは今回も変わらなくおいしかったですね (笑)。
今年のワークショップには3か国(マレーシア、シンガポール、日本)の学生が参加したというのが面白かったですね。美術担当のMMUの学生がすごく頑張っていて、自分の家から色々小物を持って来たりしたりして。チーム制だったのだけど、各チームの監督と話をして前向きに、積極的に動いていたのがすごく印象的で、映画の制作現場の感じがすごくしましたね。

‐今もそうですが、映像業界で今後も日本だけでなく東南アジアとのやりとりや共有は増えていく傾向にあると思うのですが、この辺り学生たちを見てどう感じられましたか?

磯見:日本の学生たちは、やはり最初はなかなかコミュニケーションを積極的にとろうとしないところがあって、遠慮がちというか・・・それに比べて、マレーシア、シンガポールの学生はすごく積極的で、そういう部分は日本の学生たちにも刺激になったのではないかなと思いますね。言語も違い、コミュニケーションが不自由な分、そこを乗り切ろうとする時に何かが生まれる気がしますよね。色々な国の交流により、映像制作においては可能性が色々広がることを再認識した気がします。


ワークショップ特別講師 録音 藤本 賢一 氏

藤本 賢一 氏

藤本 賢一 氏

1967年生まれ 埼玉県出身、日本映画学校(現日本映画大学)卒、『タイヨウのうた』で録音技師デビュー。主な作品に『Sweet Rain死神の精度』、『重力ピエロ』、『新宿インシデント』、『鍵泥棒のメソッド』、『ケンとメリー 雨あがりの夜空に』、『ふしぎな岬の物語』、『ソロモンの偽証』、『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』など。『八日目の蝉』、『永遠の0』で 日本アカデミー賞最優秀録音賞受賞。


ワークショップ特別講師 サウンドデザイン 石坂 紘行 氏

石坂 紘行 氏

石坂 紘行 氏

Liverpool Institute for Performing Arts、BA(Hons) Sound Technologyを卒業後、イギリス、フランス、ドイツ、東京で音楽制作/録音に携わり、映画のサウンドスタジオを経て2010年よりフリー。近年の主な担当作品に『るろうに剣心 京都大火篇/伝説の最期篇』『ちはやふる上の句/下の句』『彼女は嘘を愛しすぎている』、マレーシアアニメーション作品『Boboiboy the Movie』など。現在Imagica South East Asiaマネージメント所属。


‐初めてこのマレーシアでのワークショップに参加されたと思うのですが、学生たちの印象はいかがでしたか?

fujimoto-ishizaka_640-350藤本:みんなフレンドリーですね、やはり南国体質というのかな。日本人って学生でもプロでもやはり技術優先的なところがあるのですが、今回のワークショップではマレーシア、シンガポール、日本という違う国同士でチームを組んでいるので、重要なのは人としてのコミュニケーションという部分を大事にしてほしい、技術の習得が優先されるものではないものを実施したいと考えて臨みました。そういう意味では、それぞれの国の国民性は出たのかな。

‐今回、日本とマレーシア、シンガポールの学生が参加してのワークショップでしたが、東南アジアの映像制作の現場にいらっしゃる立場として何か印象的に感じたこと等、ありますか?

藤本:録音の立場で考えると日本の場合は、すごく細かいマイクの動きの指示なんかも、実際の作業の中で学んでいくのですが、どこの国でもそういったコミュニケーションのやり方って色々あると思うんですよね。単純に通訳の人だと、業界用語からして難しいし、なかなか理解してもらえない。だから、どの国に行っても、最後は結局、通訳は介さないんですね。なので、そういう意味では、僕たち日本人からすると、日本語が分かっている人とはすごく良いコミュニケーション取れますよね。
今回、参加した学生さんの中にも日本語が分かる学生さんがいたので、彼のような人が増えるといいですね。

石坂:もちろん、英語は大事だけど、現場の技術やノウハウを東南アジアの人たちに伝えていくのに、日本語も勉強してもらえたらもっとスムーズに、色々教えられるのにという気持ちはありますね。日本と東南アジアの今回のようなワークショップが増えると、そういう機会も増えるのになぁと思います。

藤本:IMAGICAさんのような会社が、マレーシアにこうして進出していることってチャンスだと思いますよね。日本人としては英語の重要性をやはり感じられるし、コミュニケーション能力を伸ばせますよね。


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