テレビ東京「破獄」 東京ドラマアウォード2017
単発ドラマ部門グランプリを受賞
気心知れたプロ同士の駆け引きから生まれた作品の舞台裏

4度も脱獄をした史上最悪の脱獄犯と、7年にわたって彼を見続けてきた完全無欠の看守。
今年2017年4月12日に、テレビ東京開局記念日ドラマ特別企画として放送され、IMAGICAが技術・ポストプロダクションで協力した『破獄』が、 “東京ドラマアウォード2017”において、作品賞<単発ドラマ部門>グランプリを受賞。
本作はすでに10月17日にフランス・カンヌで行われた世界最大規模の国際テレビ見本市“MIPCOM 2017”においても、世界マーケットで売れる可能性がある作品として“MIPCOM BUYERS’AWARD for Japanese Drama”でグランプリを受賞。

国内外で評価された作品に参加した撮影の加藤十大氏、照明の宗賢次郎氏、グレーディングの北山夢人(IMAGICA)に受賞の喜び、また本作の技術的な裏話について、話を聞いた。


テレビドラマを意識せずに取り組んだ作品~高い評価への喜び~

加藤
受賞を聞いたときは驚きました。大がかりな作品ではありますが、決して派手なものではなかったので、そういった作品をきちんと評価してもらい、賞をいただけたというのは非常に喜ばしいですし、良いことだなと思いましたね。


テレビドラマではあるけれど、スタッフはみんな映画の人でやっていて、特にドラマだからこうしようということは意識せず、いつも通りの感じで臨みました。そこが評価されたのはありがたいことですね。零下の網走ロケをはじめ、大変な思いもたくさんした作品ではあったので、その苦労も報われたなと思いました(笑)。

北山
率直に嬉しかったですね。受賞したこと自体もそうですが、このお二方との仕事が良い形になって、賞という結果に繋がったこともすごく嬉しかったです。
 

精鋭が揃った企画への高揚感

加藤十大氏

―3者のタッグは、同様に高い評価を受けているWOWOW『連続ドラマW 海に降る』(15)以来。それぞれ今回の『破獄』の企画を聞いたときの感想は?

加藤
まず面白そうな内容だなと思いましたね。監督が普段は映画をやられている深川栄洋さんだということも魅力的で、ドラマの枠を超えたものができるんじゃないか、という期待感はありました。


テレビ東京の田淵俊彦(プロデューサー)さんの熱意もすごくて、それこそ賞を取れるような良質の作品にしたいと最初からおっしゃっていたんです。『破獄』という作品の主演をビートたけしさんがやるという時点で、絶対に良いものになるなというのはありましたね。

北山
単純にすごく豪華な作品だなと思いましたね。もちろんグレーディングとしては作品のトーンに合わせるというのがありますが、その中で自分としても新しいチャレンジをしていけるものにできたらと思いながら、参加させていただきました。

目指したのは映画のような質感~撮影・照明・グレーディング、それぞれの挑戦~

―それぞれの言葉にもあるように、いわゆるテレビドラマとはまた違う、映画のような質感があった『破獄』。その質感は、各スタッフがそれぞれの力を発揮していくことで、自ずと出来上がったものであった。


映画を意識したというよりも、自然とそうなっていった感じはありますね。やっぱり映画で育ってきているので、映画のようなやり方や見せ方になってしまう。テレビドラマだということはあえて意識しなくてもいいのかなと思いながら、いつも通りの自分たちのやり方で取り掛からせてもらいました。

加藤
監督が深川さん、スタッフも映画のスタッフということで、求められるものもテレビドラマらしいものとはまた違う、というのはあったのかもしれないですね。映画らしい作品を目指したというよりは、テレビドラマらしい作品とはまた違うものがいいのかなと考えていました。


一方で、照明に関しては、映画の時より役者さんの顔が見えるようにしましたね。それでも暗いと言われたんですが(笑)。これが映画だったら、もっと陰影のコントラストを付けていたと思うんです。例えば顔が半分見えなくても、大画面で観れば伝わる。ただ、今回はテレビ画面で観るものなので、暗さを作りながらも暗くなり過ぎないように意識して、照明を当てて足したりしました。

北山
確かに撮ったままのものだと暗すぎるかなという部分もあって、そこはグレーディングで明るさを上げていますが、照明自体も本当に素晴らしかったです。


今回は時代も場所も変わっていく話なので、それを照明でどう表現していくかというのも、一つのテーマでしたね。最初は戦時中から始まるので、照明は電球色にして、電球の色にフィルター入れたりして。そこは加藤さんとも話し合いながら進めていきました。

加藤
途中から蛍光灯にしたんですよね。


時代によって電球から蛍光灯にしていったり、網走と札幌で刑務所によって色味を分けたりしたんです。

北山
上がってきた素材(映像)を見ていても、色々こだわられていて、結構攻めているなという印象はありました(笑)。

ロケとセット~大掛かりな作品ゆえ、一体感を目指すカギは時代感~

宗賢次郎氏

加藤
撮影としては、ロケとセットのつながりは意識しました。網走刑務所に関しては、廊下は実際にロケで撮影をして、房の中はセットだったので、そこのつながりは一番気にしたかもしれないです。セットの力が非常に大きくて、美術の金勝浩一さんが立派なセットを作ってくださったので、うまくつなげることができたかなと思います。


セットはすごかったですよね。すごいものを組んでいただいたので、こっちも負けていられないという気持ちになりました。

加藤
ただ、撮影に関して言うと、特別何かやっているわけではないんですよ。テストの段階では、刑務所の覗き窓の中をカメラが通るようなことができないかなと思って、何回かチャレンジしてみたんですが、これが非常に狭い(笑)。


リアルはさらに狭いんでしょうね(笑)。

加藤
でもやっていくうちに、物理的にあり得ない嘘っぽいカットは結局撮らないようになっていったんですよ。あえてカメラの引き尻を無視して、狙ってやっているところもあるんですが、例えば、地面にあるカメラが動いていって地下に潜るようなことはしてない。役者さん達のお芝居の力もあって、結果として、トリッキーな撮影をしなくなったんだと思います。

北山
グレーディングで意識したのも時代感ですね。そこはやっぱり出していった方が良いかなというところで、映像としてもクリアじゃない雰囲気のほうが良いのかなと。撮影されたそのままの色味に、更に色を混ぜた感じにしたんですが、まず予告編を作る時に何パターンか見ていただいて。

加藤
6パターンくらいあったのかな?

北山
そのくらい作りましたね。ちょっと暗めで、雰囲気のあるものというのが大前提としてあったんですが、それをどういう感じにしていくか。

加藤
最初にグレーディングのオーダーをした時に、「色を抜いて補正しないで、足して補正してほしい」ということを言った気がしますね。

北山
そうですね。混ぜると言っても伝わりづらいかもしれないですが、色のバランスをちょっと崩して、風合いを出しています。

ラストの名演を支えた撮影と照明

北山夢人

―撮影や照明、美術からなる雰囲気の中での役者陣の名演。本作の中でも大きな見せ場で、静かなる熱量が溢れているのが、ラストの護送車の中での浦田(ビートたけし)と佐久間(山田孝之)のやりとり。移動する護送車の荷台=木枠の格子の囲いの中での芝居場で、狭い空間の中、明かりは格子から漏れる外の光のみ。難しい条件の中での撮影となったのでは?


スタジオのセットで停め撮り(※実際には停まっている車で動いているように見せながら撮影)をしたんですが、停め撮りの場合、光も動いていかないと車も動いているように見えないんですよね。しかも護送車だから全面が格子で囲まれていて、そこから光が漏れてくるという条件だったので、なかなか難しい設定でした。同じスタジオ内に他のセットも建っていて引き尻もなかったので、どう照明を設置したら良いか。

加藤
多分、照明はあれが一番大変でしたよね。


難しかったですね。芝居で見せる部分でもあったので。その中でも工夫してうまくいったと思います。まず格子に透き間を作って、外から漏れる光を作らせてほしいと(美術の)金勝さんにオーダーをして。隙き間の間隔や角度をどの位にするのかというのも難しいところでしたね。やってみないと分からないところもあったんですが、作る段階で間隔は決めておかないといけなかったので。現場でも調整してもらいました。

加藤
あそこはやっぱり照明の力が大きかったシーンだと思います。撮影としてはそこまでの大変さはなかったですが、護送車の中は揺れているから(※停め撮りで揺らしている)、カメラの移動車を一定のスピードで押して動かすのは大変だったかなと(笑)。ただそこは、特機部(※特殊機材の部署)さんがいましたからね。

高い評価を受けた本作を振り返って


役者さん達の芝居がとにかく素晴らしかったですし、『破獄』という作品自体とても良い話なので、そこが高く評価されたんじゃないですかね。存在感のあるたけしさんがいて、山田さんもストイックに取り組まれていて、僕らも意欲的に臨むことができたので楽しかったです。

加藤
観た方たちに「良かった」と言っていただけて、エンターテイメントとして2時間飽きずに楽しめるものになっていたんじゃないかと思います。録画した番組をよく見る僕の義父も「今、面白いドラマ観てるんだよ」って言うから何だろうと思ったら、『破獄』だったんです(笑)。たまたま見たらしいんですが、最初のたけしさんの顔のアップから見入ってしまったみたいで。僕が関わっている作品だということも知らなかったらしく、褒められました。

北山
しっかりしたプロの方たちが、しっかりしたプロの仕事をしているっていうことが大きかったのかなと思います。

加藤
自分の仕事が評価されたのかなという思いは、全くないですね。撮影・照明・グレーディングの技術だけで賞が決まっているとしたら、多分それは作品として何か違うと思うんですよ。


そう、やっぱりトータルですよね。そういう意味では僕らの仕事も認めていただいたということなのかもしれないですが、やっぱりみんな良かったんだと思います。その一つになれているんだとしたら嬉しいですね。

チームとしてつかんだ受賞~この先に~


加藤さんとはもう長い付き合いで、助手の頃から一緒にやっています。メインスタッフになった時期も一緒くらいなので、一番やりやすいメンバーです。

加藤
(宗さんとは)普段からよく会話をしているのでお互いの好みも分かっていますし、現場でもお互いにやりたいことを言うからスムーズなんです。
北山さんとは、あの映画のこの感じが良かった、この映画のああいう感じをやってみたいという話を日頃からしています。グレーディングは言葉では伝えづらいものですが、コミュニケーションをよく取っているので、すごく仕事はしやすいですね。
基本、僕はいつもIMAGICAにお願いしているんです。IMAGICAは映画だけでなくコマーシャルもやっていますが、コマーシャルは15秒、30秒で勝負しないといけないので、ちょっとどこか目を引くものや、特化しないといけない部分がある。映画はもちろん、映画とはまた違う発想や手法も持っていて幅が広がるので、僕としてはやりやすいです。撮影機材も今年は全部IMAGICAでコーディネートしてもらっているのですが、設備が素晴らしいのも魅力ですね。


理屈じゃなく感覚で話ができるという感じがありますよね。

北山
僕としても、ぜひまたお二方と一緒に良いものを作れたらと思います。


作品情報

株式会社テレビ東京「破獄」(http://www.tv-tokyo.co.jp/hagoku/)
読売文学賞を受賞した吉村昭の小説「破獄」を主演・ビートたけしで映像化。
四度の脱獄を実行した無期懲役囚と、ベテラン刑務所看守の関わり合いを通して、「命とは何か」「生きるとは何か」「人と人の絆とは何か」を描く、脱獄&追跡エンターテインメントです。

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