8K/HDRオリジナル作品『LUNA』とは・・・

左から:平田研也 氏、涌井剛 氏、諸石治之 氏(以上、ROBOT)、殿塚功一、高野光啓、北山夢人

左から:平田研也 氏、涌井剛 氏、諸石治之 氏(以上、ROBOT)、殿塚功一、高野光啓、北山夢人

IMAGICAとROBOTが共同制作した8K/HDRによる実写オリジナル作品『LUNA』(池田一真監督)は、「映像美と物語の融合」「光の映像表現」をコンセプトに、8K(映像の解像度=ハイビジョンの16倍)+HDR(ハイダイナミックレンジ)で制作。8K/HDRで描かれた物語と、CG・合成およびカラーグレーディングによって生み出された世界観を通じて、エモーショナルな映像体験を提供する“新しい超高精細エンタテインメントコンテンツ”です。今後、国内外の映画祭など様々なアワードへのエントリーを行うほか、国内映像機器開発メーカーにデモ映像として提供するなど、幅広い層に向けた訴求を模索していく予定です。グループでの取り組みとしてスタートした『LUNA』が完成するまでの経緯をIMAGICAそして、ROBOTのスタッフにインタビューしました。


コンテンツメーカーとして新しい映像表現にトライ

© ROBOT

© ROBOT

渋谷公園通りスタジオ

渋谷公園通りスタジオ

インタビューの冒頭で、プロジェクト全体のプロデュースを担当したROBOTの諸石治之プロデューサーは、以前より4K・8Kといった“スーパーハイビジョン”に精通していたことから、このプロジェクトのスタートについて次のように説明した。「8Kは2018年の実用放送に向けて総務省が推進する超高精細映像の規格。NHKでは今年の8月1日から、技術検証と普及促進を目的に8Kの試験放送をBSで開始しています。今回の『LUNA』も、そのタイミングに合わせたもので、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて技術革新がもの凄いスピードで進化していくと予測され、映像表現の領域がますます拡大していく中、“コンテンツメーカー”として他に先駆けて8Kにトライしてみよう、と。また、グループ会社であるIMAGICAが8K映像編集のソリューションを備えた「渋谷公園通りスタジオ」をオープンしたことから、ROBOTとIMAGICAがタッグを組んで8Kコンテンツを共同制作するプロジェクトがスタートしました。」

諸石治之 氏(ROBOT)

諸石治之 氏(ROBOT)

現状、NHKの8K試験放送では自然・歴史・美術・紀行・スポーツ・伝統芸能といったドキュメンタリー/ノンフィクション系のコンテンツが主流となっているが、ROBOTとIMAGICAによるプロジェクトは、それとは一線を画したフィクションにチャレンジしたのが大きな特徴。
諸石プロデューサーは「何を企画のコアにするのか−−。両社が共同で制作する意味を考えたとき、やはり私たちの主戦場である“エンターテインメント”で勝負すべきではないかと思い、“オリジナルの物語をつくること”に挑戦する方向性が定まりました」とし、「その題材として、まず“人”を描くことを決めました。しかも、8Kという超高精細な映像ならではの取り組みとしてキレイな女の子を登場させよう、と(笑)。そして、HDRという輝度の特性を活かすための“光の表現”にポイントを置き、“夜”の世界観を条件としました。そこから、“月”と“女の子”をキーワードにした物語…『かぐや姫』の世界をベースにした作品づくりを進めることにしました」と話す。


スタンスは“やってみないとわからない”

平田研也 氏(ROBOT)

平田研也 氏(ROBOT)

脚本を担当したROBOTの平田研也氏は「テーマは『現代版かぐや姫』。通常の脚本づくりでは、技術的な側面についてはあまり意識しません。ですが、今回は何故『かぐや姫』なのかという理由が明確で、月、夜空、星空といったキービジュアルが8K作品として“必要”でした。そのキービジュアルが、物語の重要な場面に登場するようなストーリーテリングを念頭に置きながら執筆しました」とし、諸石プロデューサーは「8K/HDRで物語を紡ぐのではなく、物語を8K/HDRで紡ぐ。主語は“物語”。それをメンバー間の共通認識としました。8K/HDRという広大なキャンバスに、映像の作り手が“絵”を描くことがオリジナリティに実を結ぶ。そこは意識した部分ですね」と語る。

涌井剛 氏(ROBOT)

涌井剛 氏(ROBOT)

涌井剛 氏(ROBOT)撮影期間は延べ4日間。企画から完成まで約5ヶ月間という強行軍に。ROBOTの涌井剛制作プロデューサーは「僕も含めて現場スタッフのほとんどが8Kは未経験。それ故、“やってみないとわからない”というスタンスでした。『LUNA』という作品タイトルの通り、“月”が重要な要素になっているため、夜のシーンがたくさん出てくる。しかも、撮影時期はちょうど梅雨の真っ只中。果たしてタイトなスケジュールの中ですべて撮りきることができるのか、成立するのか…。上手くいくという確証が無いまま手探りで進行したところも少なくなく、完成する頃には胃が無くなってしまうのでは、というくらい悩みました(苦笑)」と制作時を振り返る。

事前準備では、スタッフロケハンに[F65RS]と[Phantom Flex4K]を持ち込み、「まずは、自分たちが今までにやってきた方法論でテスト撮影し、その素材をIMAGICAの8Kモニターで確認して対応・対策を練っていく手順で進めました。8K/HDRの見え方、ノイズ、フォーカスなどを検証し、問題点をIMAGICAのテクニカルチームと共有しながら本番に臨みました。“物語を8K/HDRで描く”という前例の無い試みでしたが、監督以下スタッフ全員が総力を結集して150%以上の“プロの仕事”を発揮してくれました」と涌井制作プロデューサーは語った。


映像制作はワークフローの1つ1つが“掛け算”

殿塚功一

殿塚功一

そのテスト撮影素材が8Kモニターに映し出されたとき、「正直、愕然としました」と話すのは、技術サイドのプロジェクトプロデューサーを担ったIMAGICAの殿塚功一(IMAGICA)。「暗部のノイズ、街灯のフリッカーが予想以上に出ていたため、すべて除去する必要がありました。作業そのものは普段から行っていることですが、今回は8Kです。そこが大きなハードルとなりました」とし、ノイズ除去には実尺の約120倍、フリッカー除去は実尺の約260倍の時間を要することに。

北山夢人

北山夢人

IMAGICAのテクニカルディレクターの高野光啓は、「解決策は「力業」。8Kだろうが、ポストプロとしてやるべきことをやる。映像制作はワークフローの1つ1つが“掛け算”だと思っています。プリプロからあがってきたものがポストプロでマイナスにならないように心掛けています」とし、テクニカルチームの一員として参加したIMAGICAのカラリストの北山夢人は「HDRは、単純に言えば見たままをリアルに映せる技術。だからといって、HDRのフルスペックを出せばいいというものでもない。作品の狙いに応じたコントロールが求められます。『LUNA』のグレーディングは、思い切りHDRかといえばそうでもなく、かといってドラマでありながら生っぽいトーンも残している。その“塩梅”が最適なのか、中途半端になってはいないか…と最後の最後まで逡巡しました」と話す。


クリエイター全体のエチュードに/可能性の一端を提示

高野光啓

高野光啓

高野は「この作品は、8KとHDRの特性を使い切っているわけではありません。作り手の思い描く「絵」を完成に導くことを第一義に注力しました。出来上がってみて「もっと違う方法があったかもしれない」という思いもありますが、それは創り上げたからこそ感じること。その意味でも、『LUNA』は習作でいいと考えています。開拓者として挑んだ結果=クリエイター全体のエチュードになれば本望ですね。やってみて初めて見えた新たな課題。それを1つの教訓として「次」に向かっていけばいい。考えながら走り、完走できて、結果なかなか良いタイムだったのでは、という手応えがあります」とし、殿塚も「『LUNA』は1つの“解”ではありますが、絶対的な正解ではありません。8K/HDRが持つ可能性の一端を示すことができたのでは、と捉えています。私たちにとっても大きな財産になっていますが、今後、この作品を見た人たちに刺激を与え、創作意欲の喚起につながっていけば嬉しいですね」と続ける。
現況、8Kの視聴環境は途上段階。ROBOTとIMAGICAでは『LUNA』の活用法について様々な模索を続けている。「とにかく多くの人たちの目に触れるようにしていきたい。映画祭での上映や、8K映像の実用化に向けた各フォーラム等と交渉・折衝しながら、“超高精細エンタテインメントコンテンツ”が羽ばたける「場」の創出に向けて、積極的に働き掛けをしていきたい、と考えています」と諸石プロデューサーは語った。

© ROBOT

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*インタビュー内容はCM通信(ユニ通信社刊)掲載内容を転載


制作環境
収録はソニー[F65RS]をメインに、ハイスピードカメラ[Phantom Flex4K]を併用し、編集作業はIMAGICAが2016年7月1日に開設した8K映像編集に特化した新拠点「渋谷公園通りスタジオ」のSnell Advanced Media[Quantel Rio 8K]と、[AUTODESK Flame]を使用した。

『LUNA』

© ROBOT

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Pr:ROBOT/PostPro:IMAGICA/Dir&Edit:池田一真/Scenario:平田研也/Total-Pl:福崎隆之/Pl:三宅章太/AD:古谷憲史/Prj-P:諸石治之、殿塚功一/P:涌井剛/Shoot-P:中村彰宏/LP&Cas:林田むつみ/A-Dir:本間利幸、斎藤栄美/PM:下野篤史、田中大地、山川芳樹、菅原直哉、横山治己、紙谷崇之、西﨑朋子、橘川大地、井上康平、平田圭佑、井元宣幸、松本千晶、福田茜、大門剛、宮川裕章/Ca:今村圭佑/B-Ca:熊倉良徳/Steadicam:堂前徹之/DIT:仲野千鶴/DM:青木伸二/L:中村裕樹/A:柘植万智/ST:山田直樹/HM:伊東久水/Crd:小池えつこ、小池武蔵、喜多村恭平/Cas:渋谷寿/TD:高野光啓、松本渉、坂谷稔/Comp&Edit:宇高大輔、小部昌史、中野裕介/Color:北山夢人/CG-P:谷内正樹/CG-Dir:西井育生/M:烏田晴奈/Rec&Mix:望月資泰、望月直矢/Sound:粕谷浩之/Title:大竹竜平/Illust:大垣美穂子/PR:中上川康二、遠田尚美、河野江見子/Ex-P:加太孝明、齋藤力、加藤雅章、藤川幸廣、南誠/T:泉はる、健太郎、鈴木裕乃、瀧来海、緒方もも、関ファイト、中島ひろ子

ROBOT http://www.robot.co.jp/

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