Netflix日本初オリジナルドラマ「火花」HDR配信開始

Netflixオリジナルドラマ「火花」 © 2016 YDクリエイション

Netflixオリジナルドラマ「火花」 © 2016 YDクリエイション

カメラが捉える広いダイナミックレンジを、極力損なうことなく表現する映像技術“HDR(High Dynamic Range)”。4Kの広がりでHDRに注目が集まる中、この度、世界最大級の映像配信サービス・Netflixオリジナルドラマとして製作された「火花」がHDR化され、その説明会が2016年10月6日、Netflix Japanオフィスで行われました。

 同作「火花」は、第153回芥川賞を受賞した又吉直樹による累計250万部の人気小説を原作としたもの。芸人たちの悲喜こもごもを描いた物語で、売れない芸人の徳永に林遣都が扮し、彼に伝記を作って欲しいと依頼する天才的な感性の先輩芸人・神谷を波岡一喜が演じています。Netflixは廣木隆一総監督のもと、全10話・本編約8時間でドラマ化。2016年6月3日から従来のモニタレンジであるSDR(Standard Dynamic Range)で世界190カ国に順次配信されていましたが、9月16日から満を持してHDRの配信もスタートしました。


Netflixが考える映像のHDR化とその未来

Netflix 代表取締役社長 グレッグ・ピーターズ氏

Netflix 代表取締役社長
グレッグ・ピーターズ氏

Netflixとタッグを組み、このHDR化の技術サポートを行ったのがIMAGICA。説明会にはIMAGICAの映画・CM制作事業部 映画プロデュースグループのチーフテクニカルディレクター・石田記理も列席。当日はまずNetflix株式会社の代表取締役社長であるグレッグ・ピーターズ氏が、「人間の目に見えているものと、ディスプレイ画面に見えているものにはまだまだ差があります。コンテンツ業界はその差を埋めるべく努力してきました」とNetflixの姿勢を説明し、その目玉でもある「火花」について語りました。

「Netflixは業界の中でも技術革新を促進させるというユニークなポジションを取っております。コンテンツを提供する、発信するのみではなく、製作も行う世界で最大のコンテンツ製作者となりました。今年だけで60億ドルをコンテンツ製作に費やしていて、140ものコンテンツ製作を予定しています。そのひとつの例として、「火花」という作品があります。我々の貴重なパートナーたちとの協力関係があって、最先端の技術で、最も美しい形で素晴らしい物語を作り上げました。これからもそれぞれの立場から技術革新を促進して、消費者が没頭できる映像体験を作っていきたいと思います」


10 年後、20年後も感動出来る映像製作を視野に

Netflix エンジニア、メディアエンジニアリング&パートナーシップ 宮川遙氏

Netflix エンジニア、メディアエンジニアリング&パートナーシップ 宮川遙氏

続いて、「Netflixはテクノロジーカンパニーだと思っています。最高の映像体験をお届けして、皆さんの視聴体験を高めていけたら」とNetflixのエンジニア、メディアエンジニアリング&パートナーシップの宮川遙氏。

より現実世界に近い映像表現ができるHDRについて解説し、「最高の映像体験ということでは、10年後、20年後も同じ感動を与えられるようにしなければいけません。その感動を保つためには高いクオリティーで製作することが大事です」とコメントしました。NetflixのHDR製作においては、HDR10(一般的なHDR規格)のみならずSDR、ドルビービションのフォーマットも同時に作ることができるドルビービジョンでのマスタリングを採用、「火花」のHDR化に際して、国内の作品として初めてドルビービジョンのマスタリングが行われたことにも言及しました。


「火花」HDR版制作の舞台裏〜撮影

ザフール 佐藤正晃プロデューサー

ザフール プロデューサー
佐藤正晃氏

そしてより具体的な説明を行ったのが、「火花」の制作を担ったザフールの佐藤正晃プロデューサーとIMAGICAの石田記理。

「もともと「火花」は、SDRのみ対応する予定だったんですね。ただ、基本は4Kでマスターを作っていたので、SDRからHDRまで持っていくことができました」(佐藤氏)

「撮影されたデータに豊かな情報量が残っているということがすごく大事なんですね。それによってモニター上でも再現域をちゃんと出せる。初めにSDRを作って、HDR化の話が進んでいったわけですが、そこにおいて大事なのは作品は誰のものなのかということ。もちろん視聴者のものではあるんですが、作っている監督、カメラマン、クリエティティブの人々がどのように世の中に送り出したいか。HDR化することで作品のテイストが何か変わってしまうんではないかという危惧もあるわけです。そこでまずHDRのトレーラーを監督、カメラマンに観ていただいて、HDRのスタートラインが出来上がりました」(石田)

「廣木総監督と鍋島(淳裕)撮影監督に観ていただいての印象は、驚きという感じでしたね。こういうものなんだ、面白いねと。HDRは非常に輝度が高いという部分が一番特徴的ということで、輝度の高いところではこういう風に撮影したほうがよかったかもしれないという意見はありました。つまりHDR基準で撮るのか、SDR基準で取るのかというのは、撮影監督としては気になるところではある。今後の映像製作において、どういう風な形でどこを目指してやっていくのか。明確にしていくべきだなと思いました」(佐藤氏)


高精細映像におけるカラーマネジメントの重要性

石田記理

石田記理

「IMAGICAでHDR作業をやるのは「火花」が初めてではありません。ただ、今回「火花」はドルビービジョンに対応していくということだったので、どういう風に設定を作り、どういう風に見せていくのか、Netflixさんと改めて技術的な相談をさせていただきました。SDRにおいてもそうなんですが、人間が物を見るというのは主観なんですよね。その主観評価を支えるために、客観評価をちゃんとしましょうと。そのために必要になってくるのが数値データです。その点において、IMAGICA内にカラーマネージメントのチームがいますので、いわゆるカラーマネージメントの経験則を踏まえてすごくいい技術交流ができたと思います。SDRではRec.709、HDRではDCI-P3という規格内で作業をしているんですが、そのふたつの全然違う色域をいかに作品のテイストを失わないで結び付けられるか。そこに向かって、IMAGICAとNetflixさんを中心とした技術陣でいろいろお話をさせていただきました。それがあって初めて監督と撮影監督を迎え入れられたという形です」(石田)

「弊社とIMAGICAさんは5年くらいのお付き合いがあるんですが、今回、HDR作業で組んだというのは、基本的に一番信頼しているところとしてカラーマネージメントという制度がしっかり確立されているというのがあったからなんです。そもそもカラーマネージメントがいないラボもあって、なかなか技術的なお話が密にできる人がいない中で、IMAGICAさんにはいろいろ考えていただけて、提案してくださるカラーマネージメントがいる。それは今回の作業においてもすごく大きなことでした」(佐藤氏)

SDR画像/Netflixオリジナルドラマ「火花」 © 2016 YDクリエイション

SDR画像/Netflixオリジナルドラマ「火花」 © 2016 YDクリエイション

HDR画像/Netflixオリジナルドラマ「火花」 © 2016 YDクリエイション

HDR画像/Netflixオリジナルドラマ「火花」 © 2016 YDクリエイション

「今回、NetflixさんのレギュレーションでSDRを作り、その先にあるHDRまで手掛けられたというのは、チャレンジでもありましたが非常に有益だったと思います。日本でグレーディングしたトレーラーを本国のNetflixさんにも観ていただいて、これならば問題はないとお墨付きもいただきました。IMAGICAとしましては日本でもドルビービジョンに対応できる体制を整えているので、いろいろなコンテンツ製作により深く関わっていければと思っています」(石田)


質疑応答も多くの質問が飛び交い、注目度の高さがうかがえた説明会。日々、映像が進化し、ますます高精細映像へのニーズも高まっていく中、IMAGICAはフィルム時代から蓄積したカラーマネジメントを始めとした知識を有効に活かし、最新の映像技術に向き合い、その役割を果たしていきます。

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