望月資泰

『ゴールデンタイム』でJPPA・音響技術グランプリと経済産業大臣賞を受賞

望月 資泰/ミキサー
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ポストプロダクションの仕事というのは、なかなかどうして理解されにくいもの。業界内でも専門が違えば未知の領域だけに、業界外ではなおさらだろう。それだけに、こんな誤解も……。

「親戚はもちろん、親にもちゃんと説明できたことがなくて、TV局に勤めてると思われてます。”何chに勤めてるんだい?”って(笑)。ただ、音の仕事だとは言ってるので、TV局で音楽を作る仕事だと思っているみたいですね。音をミックスするって言っても、普通は分からない。たとえばCMの音は音楽とSE(効果音)とナレーションで構成されていて、そのバランスをいい感じに取ってるんだよって説明するんですが、なかなか伝わらないですね(笑)」

そう語るのは、メインミキサー・望月資泰。

ただ、さすがに親戚やご両親も、ここに至って仕事内容はもちろん、そのすごさも理解できたかもしれない。作品としても国内外で数々の賞を受けている『ゴールデンタイム』(稲葉卓也監督)のMAで、第18回『JPPA AWARDS 2014』音響技術グランプリと経済産業大臣賞を受賞。その仕事ぶりは、高い評価を受けている。
「作品や演出の賞はいろいろありますが、技術者が評価されることはあまりないので、うれしかったです。JPPAはいろいろな部門の賞がある中で、僕もそのひとりに選んでいただいたというくらいの気軽な気持ちで出掛けて行ったんですが、その上の経済産業大臣賞までいただいてしまって。”僕みたいなものがすみません”という気持ちで(笑)、うれしさもありながら、とまどいもありました」


聞いた人が、普通に聞ける。それがすごく大事なこと

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 音響で大事なのは、技術はもちろん、感覚や発想。受賞も評価も、その感覚や発想が認められているからこそということになる。
「まず画だけの状態のものを見て、”こんな感じの音が付くと面白いだろうな”と想像してみるところから始まります。それで用意された音を聞いてみて、スイッチが入る。アニメーションに関して言えば、もともと音がないものなので、すべて効果さんに付けていただいた音を乗せていくことになるんですが、その音を生かすも殺すもMAの音のバランスひとつなんですよね。そこで監督や効果さんはどういう演出を狙っているのか、こちらはどういう狙いでバランスを取っているのか、そのコミュニケーションも大事な作業です」

望月自身にとって、仕事のモチベーションや達成感になっているのは、評価でも受賞でもなくて、こんな何気ないこと。
「すんなりいく仕事もあれば、皆でいろいろ苦労しながら作り上げる仕事もありますが、いずれにしても終わったあとにお客様に”ありがとうございました。またお願いします”なんてひと言いわれると報われますし、この仕事をやってよかったなって思います」

何気ないことだけれど、そう言ってもらえるのは、ある意味、なにより大事なこと。MAの仕事においても、何気ないということが、じつはなにより大事なものだとも言える。
「聞いた人が、普通に聞ける。それがすごく大事なことで、単純なことだけれど、難しいんです。CMでも『ゴールデンタイム』のようなアニメーションでも、パッと見て、終わりまですんなり違和感なく聞いてもらうっていうのが一番難しいことでもあるんですが、僕自身、目指しているのはそこですね」


“この機械を使う仕事ってなんだろう?”という興味からMAへ

もともとMAを志したきっかけが、少々変わっている。
「じつは音楽や音のことに関しては、あまり触れて来なかったんです。でも、機械や機材には子どもの頃から昔から興味があって、ラジカセを分解して、戻せないまま壊しちゃったりして(笑)。そんな中、TVや雑誌でミキシング・コンソールという機械を見て、”この機械を使う仕事ってなんだろう?”と興味を持ったのが、この仕事に進んだきっかけですね。”あの前に座って、なんかやってみたい”っていう。音の仕事には、音楽のレコーディングの仕事、ライブのPAの仕事、映像を伴ったMAの仕事の大きく3つがあるんですが、映画も好きだったので、映像に伴う仕事がいいなと思ってMAの技術を学びました。最初に就職したのは別のポストプロダクションで、実務作業としてやっていることはその会社にいた頃と変わらないですが、最新のものに触れられるのはこの会社ならではです」

研究熱心なのは、いまこんな風に仕事にも活きている。
「意外と追い込まれると燃えるほうで、逆境に強いタイプだと思います(笑)。以前、JRA競馬博物館の展示映像の仕事をやらせていただいたんですが(立体全周映像『チャッピーとエミの大冒険』)、大変さもありつつ、やり甲斐もありました。360度で9個画面があって、それぞれに1つずつスピーカーが付いていて音も360度回るという特殊な形のものだったんですよ。規格のない9.2chのシステムを想像して作るところから始めないといけなくて、3つスピーカーをまず正面で組んで、今度は後ろに回すっていうことを繰り返しながら作業しました(笑)。音の仕事はひらめきやアイデアによるところが大きくて、技術的にないものをどうやって作るかと考えることで、音作りの幅も広がっていく。それを考えるのも好きなんです」


さまざまなやり方があること、さまざまな人がいることを感じられる会社

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初仕事の話が面白い。初めてひとりで手掛けた仕事はCMで、メインミキサーが急遽来れなくなってしまったことで、手伝いだった望月が代理で担当することに。いきなりやって来た、デビュー作。
「それまで手伝いで端っこにいたのが、真ん中に座らされて。でもその時は強がって、来れなくなった先輩に”休んでいてください”なんて言ったりして。若かったからこそできたことですね(笑)」

感覚や発想、ひらめきやアイデアだけでなく、度胸も興味も人一倍。そんな望月に、これからMAの仕事を志望する人、またIMAGICAを志望する人へのアドバイスを訊いてみると。
「MAの大前提としては、音の編集を楽しめる人ですね。いまは普通の人でも触れるソフトが出回っているので、そこでいろいろ試してみるのもいいんじゃないかと思います。そうやって引き出しを作っていく中でこの会社に来ると、さらにこんなやり方もあるんだ、こんなやり方をできる人もいるんだっていうことをきっと感じられると思います。僕自身もまだまだ研究と発見の連続ですよ」

Text:渡辺 水央 / Photo:杉崎 勝己

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