柘榴坂の仇討

マジックを可能にするロジックに裏打ちされたチーム力で臨んだポストプロダクション業務〜映画『柘榴坂の仇討』

後列左から
デジタルカラーグレーディング/関口 正人、カラーマネジメント/由良 俊樹、テクニカルディレクター/酒井 教援、データマネジメント/齋藤 真裕、データコンフォーム/松尾 経子、ラボコーディネート/川島 大資

前列左から
デジタルシネママスタリング/山田 瑞恵、VFX/浅野 秀二、カラーマネジメント/半田 彩子

降りしきる雪の中に立つ男たち、そして雪と男たちの向こうに立つ江戸城・桜田門。種明かしをしてしまえば、そこはもちろん江戸ではなく京都の撮影所で、桜田門はスタジオのグリーンバック撮影の素材にVFXで作り上げられた合成。また雪にしても、CGで描かれている。映画のマジック。それはマジックを可能にするロジックに裏打ちされている。

今秋公開される、映画『柘榴坂の仇討』(若松節朗監督)。本作で、ほぼすべてのポストプロダクションを手掛けているのは、IMAGICAのスタッフチーム。まず、「窓口業務として、お客様であるプロデューサーさん、カメラマンさんたちと連絡を取り合って、社内の現場スタッフとの間に立って調整する役」というラボコーディネートの川島大資、「作品の頭からお尻まで、トータルで技術的なサポートをする仕事です」というテクニカルティレクター・酒井教援がいて、データマネジメントの齋藤真裕が、「現場で撮影されたデータを最適化して、編集部さんなどに渡す役目をしています」。

また今回の撮影では、VFXの浅野秀二が「撮影前のイメージ開発のところから加わって、現場にも立ち会いました。その間に上がってきた素材の色を調整してもらって、僕の後ろにいる何十人というCGチームにお願いをする」という形で作業を進めている。

その色を調整する仕事であるデジタルカラーグレーディングの関口正人は、「仕事としてはカラリストというもので、繋がった状態での素材のバラつきを整えていくというものです」。色に関しては、カラーマネジメントも撮影前から撮影後まで関わる仕事。「現場での見え方や、グレーディングのときの見え方を合わせて、正しく作業できる環境を整える仕事です」(半田彩子)。「モニターの調整やテスト撮影のときにルックを作成して、各セクションの色を統一的に管理しています」(由良俊樹)。

そして最終的に、「皆さんが仕上げてできあがってきた最終状態の画と音を順番に合わせて、映画館に掛けるためのデータを作る仕事」であるデジタルシネママスタリングの山田瑞恵が、ポストプロダクションの一番最後の工程を務めている。


社内スタッフ、チームで手がけられる大きな強みとは・・・

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その一連を同じ社内のスタッフ、チームで手掛けられるというのは、作品にとってもスタッフ当人たちにとっても、大きな強み。「ささいなことでもすぐに確認が取れて訊きやすいですし、それぞれのスタッフの仕事ぶりや個性も分かるので、それを見越して”こういう風にしておきました”っていう進め方もできます」とデータマネジメントの齋藤。ラボコーディネートの川島も「社内だと会いに行ってすぐ話せるので、やりやすいですね。言いづらいことも、同じ会社の人間だけに言いやすいというのもあります(笑)」。

デジタルカラーグレーディングの関口は、「齋藤さんからいただいたものをカラーリングして、後ろに引き継いでいく仕事なので、ちょうど流れの中間なんですよね。それだけに各部署と連絡を取りやすいというのはよかったです。データが何時頃入るというのも事前に分かるので、進行しやすかったですし、専属で専門にやっているプロフェッショナルが社内の各部署にいるので、何かあったときや分からないときも、誰かに訊けば確実に答えが出るんですよね」。

また作業中には、こんなことも……。
「IMAGICAでお客様にプレビューを見せるときに、ストレージの読み込みが遅くて、ほかのところで何か作業してる影響じゃないかってなったことがあったんです。それであらゆる部署に電話をして、関口さんにその作業を止めてもらいまして。社外だったら、そんな連携で作業を止めてもらうことなんて、できないじゃないですか(笑)。あれは同じ会社だからこそでしたね」(VFX・浅野)
「そのおかげで、お待たせてしないでお客様に見せることができました(笑)」(デジタルカラーグレーディング・関口)
「あと、デジタルの映像になって、見た目では分からないんだけれど、エラーが出ている場合もあるんです。そういう僕が見落としていそうなところを、由良さんたちに指摘していただいたりもして」(VFX・浅野)
「肉眼では全然分からないところで、細かいんですよね、我々が(笑)。もちろんそれぞれの部署で品質には責任を持ってやってますが、万が一エラーだった場合を考えて、部署をさかのぼって訊くということはしています。フィルム時代から、チェックは品質の一番最後の砦。デジタルになってもそれを変わらずやっているというのは、IMAGICAの自負です。あと今回の作業で、お客様からほかのところで素材を見たときに、色が違って見えるという相談をいただきまして、関口と一緒に出向いて、そう見える理由を説明したりもしました。僕らは色を測って数字で説明するんですが、関口は見る目を持ってますので、感覚的な説明もできる。そうやって両方でサポートできるのも、同じ社内のチームで仕事ができるよさですね。何かあった際の対処も早いです」(カラーマネジメント・由良)


皆がプロフェッショナルだからこそ、迅速さが丁寧な仕事を生む

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迅速さという利点は、社内にとっても、発注先にとっても大きなもの。迅速なだけに、一方でさらに丁寧な仕事も可能になる。
「デジタルシネママスタリングは本当に一番最後の工程なので、仕上がりのチェックがすごく大事になってくるんです。その確認が社内だとしやすいというのは、大きいですね。チェックを始める前にこれまでの工程についてのメールも見ているので、こういうところを気をつけたほうがいいというのも分かりますし、作業にいつ入れるという流れで把握できる。チェックのときに、連絡をしたら一緒に観てもえるというのもいいところで、今回もそのためのプレビューをして、あらためて確認してもらったりもしました」(デジタルシネママスタリング・山田)

なにより大きいのは、同じ社内のスタッフというだけでなく、それぞれが専門のプロフェッショナルであるという点。
「高価なマシーンから安価なマシーンまで幅広くいろんなものが揃っていて、それを専門に使える人が揃っている。お客様の要望に応じて、いろんな組み立てができるというのは、お客様にとってもIMAGICAを選ぶ大きなメリットなんじゃないかなと思います」(テクニカルディレクター・酒井)

スクリーンの中、桜田門のある風景に雪を降らせて、このうえなく映画的な情景を作り出す。そんな尽力は、映画からはうかがえないかもしれない。ただ、それこそ成功の証し。そんなマジックとロジックに、IMAGICAのポストプロダクションスタッフの技術とチーム力がある。

Text:渡辺 水央 / Photo:杉崎 勝己

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